人生寄り道回り道

近道だけが正解じゃないでしょう?

Elona oomSE 龍娘冒険譚 その0.5 ~プロローグ~

「いいか? エリス。お前はこの17年この島で過ごしてきたが世界は広い。私はそれなりに強いと自負しているが、私より強い奴もいることだろう。」

 薄暗い洞窟の中、グリーンドラゴンのエラはこれから旅立つ娘に忠告をしていた。

「お母さんより強い奴なんているわけないじゃん! 龍は最強なんでしょ?」

 娘、エリスハエラが瞳をキラキラさせて自信満々に返答する様を見てエラは軽くため息を吐く。エリスは生まれて17年、エラの徹底した龍の偉大さや龍の強さの教育を受けてきた。娘が自分に憧れてくれるといい気分になったエラの教育は次第に自慢話といった様相になり、その結果がこれである。

 

 ドラゴンは確かにこの世界で強力な種族だがグリーンドラゴンという種族はどちらかといえばその下のほうであり、エラも全体でみれば弱いほうなのだ。

「あー…龍は最強だけどもしかしたらってこともあるから注意するように。」

「…? たぶん分かった!」

 精一杯、娘を傷付けないようにやさしい言葉で諭すがそんな表現で娘に伝わるわけもなく、娘のおそらくわかってないであろう返事が返ってきた。

「…ってもうそろそろ船の時間だ! 名残惜しいけど行ってくるねお母さんっ!!」

 時計の針を確認し、荷物を持ち洞窟を出る準備をするエリスに対しエラは最後に声をかける。

「龍の心得!!!」

「はいっ! 小細工など無用! 圧倒的な力を以って正面から打ち破るべし!」

「よろしい! では気を付けていってらっしゃい我が娘!」

「いってきますっ!!」

 意気揚々と洞窟を飛び出し羽を広げ飛び立つ娘を見送る母の視界は滲んでいてすぐに娘の姿は見えなくなってしまった。

「ふふっ寂しくなるな…」

 冒険者である夫は旅に出ていることが多くほとんど一頭で娘を育てた17年という時間は長命のドラゴンにとっては短い時間のはずだが、今まで生きてきた中で間違いなく一番長く感じられる時間であった。

 娘が見えなくなった空を見上げ感慨にふけりながらエラはふと思ったことを呟く。

「…教育方法間違えたかな私」